2014年05月05日

教養人・内田百閒 1



玄関の2枚の張り紙には、

「世の中に、人の来るこそ、うるさけれ、とは云うものの、お前ではなし」
「世の中に、人の来るこそ、楽しけれ、とは云うものの、お前ではなし」

と書かれてあったとか。これでは誰も入れない・・・ こんな屁理屈を書いた人は、永井荷風と並ぶ奇人作家の内田百閒(1889-1971)。岡山の造り酒屋に生まれ、東京大学独文科に進み夏目漱石に師事。美文家の三島由紀夫が「現代、随一の文章家は内田百閒である」と折り紙をつけたほどの大文章家です。洒脱でユーモアあふれる随筆「百鬼園随筆」「阿呆列車」「ノラや」「日没閉門」など数多くのエッセー、短編小説を発表しています。そんな一文がこちら。「人間が無意味に大きくなりたがる為に、我我は日常どのくらい不自由しているか解らない。又大きいから強いとも限らない。仮にそうだとしても、みんな大きくなれば、結果は同じ事である。いくら身体を大きくしたって、人の寿命と関係はない。大きな体格の者が死ねば、大きな屍骸が残るに過ぎない」(百鬼園先生言行録より)
  

Posted by 小林史人 at 18:00Comments(0)